春のせいにして

新しい仕事が無事に決まった。
そして、先週、彼も新しい職場へ移ることを知らされた。


元々予定通りだったので、驚きはそんなに強くなくて、
むしろ、とうとう来たか、という実感の気持ち。


もともとコロナで予定外のことが続き、情緒が不安定になってしまった。
家族に本当の理由を言えるわけもないし、心配をかけることはできない。
台所で涙がでてしまってやばいと思った。
ずっと閉まっていたお薬を飲んで、早めに布団に入ってごまかした。
それでも夜中に目が覚めてうまく寝付けなかった。
こんな状態になるから恋愛はもう卒業しないと。


去年からの約束通り、今月いっぱいで区切りをつける。


彼は車も変えるようだ。新しい場所で、心優しいイケメンとして
私との不貞など何にもなかったかのように、
たくさんの女性にときめきポイントを与えるのだ。
それで世界が平和になるなんて。


「浮気男の特徴」みたいなネット記事にそのまま当てはまっている彼。


テンプレみたい。しっかり者で働きものの姉さん女房の目を盗んで
これからも上手に遊びつづける。


もう会えないなら飾る必要なんてない。
ほんとにだめ男だね。と言ってやったら、
でもだめ男ってモテるんだよね。って笑っている。


好きだよって言うから、大好きだよって返したら
好きはよくても大好きはだめ、なんだと。
そして、悲しむ人がいるでしょうと、遊び人は深入りしない。
時世に反していつも通りにキスをする。
俺に会える回数が減ってしまって残念だねとしつこい。
愛しているようで愛していない。


さびしいと泣きつく自分もいて、どこか解放感のある自分もいて。
中途半端に正当化して流されて
浮気をしている自分に自信が持てなくて、嫌いだったのだ。


とりあえず誕生日とホワイトデーを覚えていただけで
奇跡だった。まったく期待していなかったのに。
お別れが決まったとたんに高価なプレゼントをくれるなんて、
苦笑いしてしまう。


早く時間が過ぎ去ってほしい。